松本善男クリニック



 
 

【ストレス社会を生きるための基礎知識】
  従来タイプの"みんなのうつ" 個性化した"それぞれのうつ"


こんな変化、症状に要注意!

 今日は“みんなのうつ”と“それぞれのうつ”というお話をさせていただきます。みなさんは、うつについてどんなイメージをお持ちでしょうか?かつての右肩上がりの時代には、日本人は寝る間も惜しんで頑張ってきました。その中でヘトヘトになりガソリンが切れた状態で、うつになるのが一般的でした。誰がなっても不思議はないので、なり方も症状も判で押したように同じでした。ところが、いまや格差社会になり、ストレスの内容も大きく変化し、うつも様変わりして個性的になっています。
 しかし、依然として昔からのうつもありますので、そちらから簡単にお話ししたいと思います。1番わかりやすい症状は、朝起きるのがつらくてたまらない、朝食も食べたくない、朝刊を読む意欲もない。朝はエンジンがかからないのに、昼頃から少し回復して、夜寝る頃に元気になるといった「日内変動」が特徴です。風呂好きの方でも入浴が苦痛になり、眠りも悪くなります。寝つきが悪く、寝覚めが悪い。寝入っても夜中に目が覚めて、そのまま眠れない方も多いです。
 体にも様々な症状が出てきます。後頭部が重かったり肩や背中に重しが入ったような不快感があるなど、うつになると、なぜか体の後ろの方に症状が出ます。ところがパニック障害などの不安症状の場合は、息苦しさや鼓動の激しさなど、体の前の方に症状が出やすいのです。スキンシップもイヤになり、性欲も低下します。便秘をしますし、食欲も低下して胃の調子も悪くなる。内臓全体の働きが落ちた状態になってしまいます。逆に言えば、ちゃんと眠れて、食事がおいしくて、いい便が出るなら、まず大丈夫です。

開き直って取りあえず休もう

 従来のうつは、いわば過剰適応して疲れきってしまったものです。そのため“寝込んで、戸も閉め切って、モノも言わない”という状態になってしまいます。よく“うつは心の風邪ひき”“簡単に治る”と言われますが、それはこの典型的なタイプのことです。
 ちょっと話が横道にそれますが、神戸はありがたいことに日本で1番精神・神経科や神経内科等の診療所が多いのです。東京に負けず劣らずで、中央区だけでも7、8カ所あります。これは市民の気風と関係があるのかもしれませんが、神戸の方は気軽に診療を受けに行かれますし、また気軽に診てくださる先生も多いのです。関西の方は、診断書に“うつ状態”と書いてもあまり気にされませんが、関東の方はすごく嫌がられる。関西と関東は別の国かと思うほど違いますね。神戸の方は、調子を崩した時に気軽に医者にかかれるという点で非常にラッキーな土地に住んでおられると言えますね。話をもどして、典型的うつの対処法は、まず休むことです。先ほどお話しした症状が出たら、とことん苦しくなる前に早めに休むのが1番の予防法であり、治療法です。ところが、うつになりやすいのは真面目で律儀な方なので、体は休んでも気持ちが休めない方が多い。そこで、私たち医者は、薬を出すなどして休むお手伝いをするのです。取りあえず、休んで眠れたら、それだけ回復が早いのです。こうした場合には薬がとても有効です。もう一つ対処法で大切なことは、頑張らさない、励まさないこと。うつは、ガソリン切れでエンストを起こした状態ですから、励ますのは逆効果です。典型的で軽いうつの場合は、3ヶ月程度存分に休めば、大抵の方が良くなられます。



うつ的な適応障害が増えている

 ここまでは、典型的うつである“みんなのうつ”についてお話ししてきました。ところが、最近はうつも個性化して“それぞれのうつ”が出てきました。こちらは、抗うつ剤が効きにくく、なかなか治らないことが多いのです。適応障害という言葉を聞いたことがおありでしょうか?周りとの関わりがうまくいかず、ストレスが続いた時になるものです。皆と違って価値観が一つでないため、何をどう頑張っていいかわからない。それで、ガソリン切れでエンストを起こしているのに、アクセルを踏んで空ぶかししてしまう状態です。同じうつでも、気持ちの中に興奮や昂り、やり場のないざわつきがあり、これが従来の活動停止型うつと違うところです。うつと言うより、実はうつ的な適応障害で、これからどんどん増えてくるのではないかと思われます。
 今の時代は誰もが、この昂りのあるうつになる可能性を持っています。ただ、その方の気質等によって現れ方が違ってきます。たとえば「一人でマイペースが得意」な統合失調症的気質の方は、持続力・集中力に優れた頑張り屋です。こうした方は、うつ状態とともに体の痛みとして出やすいのです。「エネルギッシュで社交的」なそううつ的気質の方は、日頃大活躍している分、うつ状態になった時の無価値観や孤立感が大きくなります。「几帳面なセルフコントロールの人」である強迫的気質の方は、コントロールが上手くいかない場合に適応障害を起こしやすいのです。他にもいろいろな気質がありますし、この3つだけでも一人の中に混じり合っているのが普通です。

今は“それぞれのうつ”の時代

 今挙げた3つの気質だけでも、それぞれに長所があり、裏返せば短所になります。従って、タイプにあった対応が必要です。統合失調症的な方は、マイペースを大事にしてあげた方がいい。そううつ的な方は、世のため人のために頑張る正義の味方ですが、一人は苦手です。だから、“一緒に”という部分を大事にしてあげなければなりません。細部にまでこだわり、思い通りにならないと気がすまない強迫的な方は、自分だけの仕事を完結させる場合は素晴らしい力を発揮されます。しかし、このタイプが上司になって、部下も同じ強迫的で几帳面なタイプだと、必ず部下がつぶれます。こうした方は、人それぞれだと認めていただくことと、もう少し気分まかせにやっていただくことをおすすめしています。
 ここ10年ほどの間に、副作用がなく、とても良く効く新薬が登場して、従来のうつは大変治りやすくなりました。ところが弊害も出ています。従来のタイプではない昂りのあるうつの方が新薬を飲まれると、昂りがより強くなって、こじらせてしまうことがあるのです。“みんなのうつ”ではなく、“それぞれのうつ”の時代になり、どんな気質の方がどんな場所でどんな適応障害を起こされたかによって、異なる治療が必要になっています。職場や家庭でも同じで、誰にでも通用するアドバイスはないので、むしろ聴いてあげるだけの方がいい。ご自分や周りの方がうつになられた時にはまず、そんな対処をお願いしたいと思います。

それそれの適応障害・それぞれの対応

一人でマイペースが
得意なタイプ
エネルギッシュで
社交的なタイプ
確認・点検きっちりの
几帳面タイプ

スキゾイド(総合失調症的気質)な人で、持続力・集中力に優れた頑張り屋。宴会や飲み会はちょっと苦手。部下を持つと気を使いすぎて疲れてしまう。

そううつ的な人で、世のため人のために頑張る正義の味方。気配りは得意だが、頑張りすぎて過剰適応になりやすい。一人で疎外感を感じる状況は苦手。

細部までこだわり、思い通りにならないと気がすまない強迫的な人。セルフコントロールの人で、自分だけの仕事を完結させる場合は素晴らしい力を発揮するが、部下にも同じことを要求するので、部下を持つのは不向き。

体の痛み、身体化障害として出やすい。
突然仕事に行けなくなることがある。

うつになった時の無価値観や孤立感が人一倍大きい。

コントロールが上手くいかない場合に適応障害を起こしやすい。

「マイペース」を大事にしてあげる。
反省禁止、あれこれ考えない!

「一緒に」を大事にしてあげる。頑張り過ぎです。もう休もう!
「達成感」を大事にしてあげる。
気分まかせでいいよ!


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